「ストーブから1m」の出どころを探しました
そろそろ暖房器具を出す季節です。ストーブのまわりは「1m空ける」とよく言われますが、調べてみると、書いてある数字がページごとにかなり違いました。家具や壁から50cm、カーテンから1m、左右は50cmで後ろは20〜30cm、ファンヒーターなら15cmでよい。どれも自信を持って書かれていて、どれを信じればいいのか分かりません。
わたしは最初、どこかのページが大げさに書いているのだろうと思っていました。でも根をたどると、どの数字も同じ1つの表から来ていました。総務省令の「離隔距離」の表です。ストーブの種類ごとに、上・横・前・後ろの4方向の距離が別々に決まっていて、各ページはその表のどこか1行だけを書いていました。この記事では、その表をそのまま部屋の寸法に置き直してみます。
表の中で「1m」なのは、前と上でした
根拠になっているのは、「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令」(平成14年総務省令第24号) です。名前のとおり、市町村が火災予防条例を作るときの基準で、第20条に「別表第一の左欄に掲げる対象火気器具等の種別に応じ、それぞれ同表の右欄に定める離隔距離」と書かれています (e-Gov 法令検索)。
別表のうち、ふつうの部屋 (壁や家具が燃える材料でできている場合) の欄から、家庭で使う暖房を抜き出すとこうなります。わたしが確かめた範囲では、この表の出どころを書いた部屋づくりの記事は見つかりませんでした。
| 種類 (省令の区分) | 上 | 横 | 前 | 後ろ |
|---|---|---|---|---|
| 反射式石油ストーブ (放射型・7kW以下) | 100 | 50 | 100 | 20 |
| 対流式石油ストーブ (自然対流型・7kW以下) | 100 | 50 | 50 | 50 |
| 石油ファンヒーター (強制対流型・12kW以下) | 100 | 15 | 100 | 15 |
| 電気ストーブ (前方放射型・2kW以下) | 100 | 30 | 100 | 4.5 |
| 電気温風機 (セラミックヒーターなど・2kW以下) | 4.5 | 4.5 | 吹出方向 60 | 4.5 |
単位はcmです。上の100cmは5種類のうち4つ、前の100cmは3つで同じでした。一方、横と後ろは4.5cmから50cmまで開いています。「家具から50cm」は反射式や対流式の横の値、「15cmでよい」はファンヒーターの横と後ろの値で、どちらも表の1行としては正しい数字です。ただ、種類を書かずに言い切ると、別のストーブを使っている人には外れた数字になります。
メーカーの取扱説明書も、この表に沿っていました。ダイニチの石油ファンヒーター FW-326S の説明書は、可燃物との距離を上1m・前1m・横15cm・後ろ15cmとしています (FW-326S 取扱説明書)。省令の「強制対流型」の行と、数字がひとつも違いません。
もうひとつ意外だったのが対流式です。丸い筒型の石油ストーブは、7kW以下なら前も50cmで、四方に同じ50cmを取る形でした。熱が全方向に出るので、前だけを特別扱いしないのだと思います (これは表の形からの推測です)。
30cm離しても、布団は100℃になります
では、前の1mはどれくらい大事なのか。東京都が、使用中の電気ストーブの前に綿布団を置いて、距離を変えながら温度を測っています (東京都 ストーブの安全な使用に関する調査)。

5cmでは11分で煙が出て、14分で布団の表面が500℃以上になりました。10cmでは煙は出なかったものの約200℃、30cmでも100℃以上まで上がっています。触れていなくても、30cm先の布団が100℃です。同じ調査で、電気ストーブを物から1m未満の距離で使っている人は6割を超えていました (石油ストーブは3割)。
東京消防庁の資料では、令和2〜6年の5年間に管内でストーブが原因の住宅火災が451件あり、そのうち76.7%が電気ストーブでした (東京消防庁 STOP!ストーブ火災)。死傷者254人のうち、布団や衣類などの繊維に火がついた件数が56.7%を占めます。火を使わない電気ストーブのほうが、周りに物を置かれやすいのかもしれません。資料によると、ストーブ火災は平均最低気温が15度になる10月から増え始めます。
6畳の床で、離隔の「箱」を測りました
表の距離を、実際の機種の寸法に足してみます。本体の幅に横の距離を両側ぶん、奥行きに前と後ろの距離を足すと、平面で「可燃物を入れない箱」ができます。床が見える面積の記事と同じ江戸間の6畳 (9.1872㎡) で割ると、こうなりました。寸法は各社の公表値で、ダイニチは取扱説明書、コロナと山善は公式ページの表記です (DS-E081は販売終了品)。
| 機種 (メーカー公表寸法) | 箱の幅 × 奥行き | 面積 | 6畳に占める割合 |
|---|---|---|---|
| ダイニチ FW-326S (ファンヒーター・幅37.1×奥行29.9) | 67.1 × 144.9 cm | 0.97 ㎡ | 10.6% |
| コロナ RX-2226Y (反射式・幅45.2×奥行32.4) | 145.2 × 152.4 cm | 2.21 ㎡ | 24.1% |
| 山善 DS-E081 (電気ストーブ・幅32×奥行15.5) | 92.0 × 120.0 cm | 1.10 ㎡ | 12.0% |
反射式の箱は、ファンヒーターの2.28倍の広さになりました。前と上の距離は同じなので、差はほぼ横の50cmから来ています。箱の幅145.2cmは、6畳の短い辺261cmの55.6%です。
わたしは、温風を吹き出すファンヒーターのほうが周りに場所を取るものだと思っていました。数字にすると逆で、物に囲まれた部屋で場所を食うのは、横に熱を出す反射式のほうでした。物を減らさずに暮らしている部屋では、この横の距離が効いてきます。
前の1mは、ソファの前の床と重ねられます
箱の中でいちばん大きいのは前の1mです。ただ、ここは「物を置けない床」であって、人が座ったり通ったりしてはいけない場所ではありません。だとすれば、もともと物を置かない床に向けてしまえば、失う床は増えません。

6畳の短い辺261cmに、搬入経路の記事で使った無印良品の2.5シーター (奥行90.5cm) を置き、向かいの壁にストーブを置いてみます。ファンヒーターなら後ろ15cm+本体29.9cmで、ソファとの間に125.6cmが残ります。前の1mを取っても、まだ25.6cm余ります。反射式で18.1cm、電気ストーブで50.5cmの余りでした。6畳なら、どの機種でもソファと向かい合わせにできる計算です。
この間の床は、通路の幅の記事で書いた通路の帯と同じ場所です。通路はもともと家具を置かずに見せておく床なので、ストーブの前の1mと重ねても、部屋の見え方は変わりません。気をつけたいのは、この帯に置きがちなものです。ソファの前に脱いだ上着やクッションを置く習慣があると、そこがちょうど前の1mに入ります。
上の1mは、壁に飾る高さとぶつかります
もうひとつ、表の「上100cm」も部屋の寸法に置き直してみます。FW-326Sの高さは42.9cmなので、床から142.9cmまでは燃えるものを置かないことになります。

壁に飾る高さの記事で、美術館は絵の中心を床から145cmにしていると書きました。この高さにA3の額 (縦42cm) を掛けると下端は124cmで、ストーブの上の帯に18.9cm入ります。上に掛けたいなら、中心を164cm以上に上げる必要があります。反射式 (高さ47.5cm) なら168.5cmです。
正確に言うと、壁の絵はストーブの真上ではなく、後ろに15cm空けた壁の面にあります。表は上・横・前・後ろの4方向を決めているだけで、斜め上の範囲は書いていません。わたしはここで迷いましたが、暖かい空気は壁を伝って上がるので、安全側に「上の帯」として扱いました。ダイニチの説明書の図も、上の1mを本体の真上の棚で示しています。
図を描いていて、ストーブは絵の下より、棚の横に置くほうが素直だと分かりました。腰高の棚の横なら、ファンヒーターで15cm、電気ストーブで30cm、反射式で50cm空ければ表の距離を満たします。ただし棚の上に布ものを置くなら、その布もストーブから見て横の距離の内側に入らないようにします。
置き場所を決めたら、メジャーで箱の寸法を床に当ててみることをおすすめします。前の1mを養生テープで床に貼っておくと、冬のあいだ物が入り込みにくくなります。ストーブガードを使う場合は、囲いに洗濯物を掛けないよう、メーカーも注意書きを出しています。
まとめ
「ストーブから1m」の出どころは、総務省令の離隔距離の表でした。上の100cmは5種類のうち4つ、前の100cmは3つで共通ですが、横と後ろは種類で4.5〜50cmまで変わります。「家具から50cm」も「15cmでよい」も表の1行としては正しく、種類を書かないと誤差になります。
東京都の実験では、電気ストーブから30cm離した布団が100℃以上になりました。東京消防庁管内のストーブ火災の76.7%は電気ストーブです。6畳で機種ごとの「箱」を測ると、ファンヒーターは床の10.6%、反射式は横の50cmのせいで24.1%でした。
前の1mは、ソファの前の床と重ねれば、失う床は増えません。上の1mは、壁に飾る高さとぶつかるので、ストーブは絵の下ではなく棚の横へ。前と上の1mを、もともと物を置かない場所に向ける。それが、物を減らさずに冬を越すための、暖房のまわりの寸法です。
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