照明の「〜6畳用」の寸法 — 天井の1灯は、机の上を100ルクスにする数字でした

「〜6畳用」の6畳は、どの畳でしょうか

シーリングライトの箱には「〜6畳用」「〜8畳用」と書いてあります。部屋の畳数と合わせて選べばよさそうに見えますが、その6畳が何平米なのか、そして「用」とはどういう明るさのことなのかは、箱には書いてありません。

調べてみると、この表示には出どころがありました。一般社団法人日本照明工業会 (JLMA) のガイドA121「住宅用カタログにおける適用畳数表示基準」です。三菱電機のFAQも「適用畳数は日本照明工業会ガイドA121:2023に準じております」と書いています (三菱電機FAQ 6067)。メーカーが好きに決めている数字ではなく、業界で共通の表がある、ということです。

その表には、畳数の横に「約○㎡」も書いてあります。〜4.5畳は約7㎡、〜6畳は約10㎡、〜8畳は約13㎡、〜10畳は約16㎡、〜12畳は約19㎡、〜14畳は約23㎡。この㎡を畳の規格で割り戻してみると、1畳=1.62㎡のときだけ、6行すべてが一致しました。江戸間 (1.5488㎡) では2行、京間 (1.6562㎡) では4行しか合いません。

1.62㎡は、ラグの記事で書いた「不動産広告の畳」と同じ数字です。照明の「6畳」は、部屋の畳でもラグの畳でもなく、広告の畳と同じ単位で数えられていることになります。広告の畳数どおりの部屋に、広告の畳数どおりの照明を選ぶなら、単位は合っているわけです。

基準表には、前提が書いてあります

表そのものは、JLMAのサイトに載っています (LED照明器具の適用畳数について)。シーリングライトの行だけ抜くと、こうなります。

適用畳数約㎡標準定格光束表示できる範囲
〜4.5畳約7㎡2,700 lm2,200〜3,199 lm
〜6畳約10㎡3,200 lm2,700〜3,699 lm
〜8畳約13㎡3,800 lm3,300〜4,299 lm
〜10畳約16㎡4,400 lm3,900〜4,899 lm
〜12畳約19㎡5,000 lm4,500〜5,499 lm
〜14畳約23㎡5,600 lm5,100〜6,099 lm

出典: (一社)日本照明工業会 ガイドA121:2023 (JLMA LED照明ナビ掲載の表)

大事なのは表の下の注記です。原文にはこう書いてあります。

定格光束は、机上面の目安照度である100 lx(ルクス)を基準とし75 lxから150 lxとした場合の光束(ルーメン)を示している。

つまり「〜6畳用」とは、6畳の部屋の机の上を100ルクスにする光の量のことです。3,200ルーメンが標準で、75ルクスから150ルクスまでを「6畳用」と表示してよいので、同じ「6畳用」でも明るさに2倍の幅があります。JLMA自身も「同じ畳数表示でも規格には幅があります」と注意を書いています。

わたしは最初、検索上位にあった「1畳あたり400ルーメン」という目安で、6畳なら2,400ルーメンと計算しかけました。でも表を見ると、6畳の下限は2,700ルーメンです。1畳あたりの標準光束は4.5畳で600、6畳で533、14畳でようやく400になります。「1畳400」は、いちばん大きい部屋のときの数字でした。

100ルクスは、居間のどの行為にも当たりません

では、机の上の100ルクスとは、どのくらいの明るさなのでしょうか。照明の基準であるJIS Z 9110:2010の表17に、住宅の居間の推奨照度が行為別に書いてあります (JIS Z 9110:2010)。

居間での行為維持照度
手芸・裁縫1,000 lx
読書500 lx
団らん・娯楽200 lx
全般50 lx

出典: JIS Z 9110:2010 表17 (住宅その1)。注記に「軽い読書は娯楽とみなす」とある

JIS Z 9110 表17の居間の照度 (全般50・団らん200・読書500・手芸1,000lx) と、天井1灯の100lx、60形電球からの距離を並べた図

天井の1灯が机の上に作る100ルクスは、この表のどの行にもありません。全般の2倍で、団らんの半分で、読書の5分の1です。部屋全体としては明るすぎ、何かをするには足りない、という中間の数字になっています。

わたしは最初、これを「天井の1灯の基準が低すぎる」と読みかけました。でも表17の注記を読み直すと、そうではなく設計の思想が違うのだと分かりました。注記には、「それぞれの場所の用途に応じて全般照明と局部照明とを併用することが望ましい」と書いてあります。天井の1灯は全般照明の側で、読書や団らんの明るさは、手元の局部照明で足す前提になっているわけです。

なお、JISは照度をどの高さで測るかも決めていて、基準面を特定できない場合は「床上0.8 m(机上視作業),床上0.4 m(座業)」を仮定します (4.3.2)。この話は明るさの基準面の記事に書きました。JLMAの「机上面」がどちらの高さかは、公開されている表には書いてありません。

光の7割は、机の上以外へ行きます

3,200ルーメンで9.72㎡ (6畳×1.62㎡) の机の上を100ルクスにするには、100 × 9.72 ÷ 3,200 で、光束の30%が机の上に届けばよい計算になります。裏を返すと、残りの7割は壁と天井と器具の中で使われている、ということです。

適用畳数ごとに、標準定格光束のうち机上面100lxに届く割合 (4.5畳27%〜14畳40%) を示した横棒グラフ

この割合は部屋が大きいほど上がります。4.5畳で27%、6畳で30%、8畳で34%、14畳で40%。小さい部屋ほど壁が近く、壁に当たる光の割合が増えるためで、白い家具の反射率の記事で見た「部屋が小さいほど壁の色が明るさを決める」と同じ向きの話です。6畳の部屋で天井の1灯に頼るなら、壁と家具の色は光の量の一部だと考えたほうがよさそうです。

ただし、この30%という数字は表から逆算した値です。器具の効率や壁の反射率を基準がどう仮定しているかは、公開されている表には書かれていません。「6畳では3割」と言い切るより、「大部屋より小部屋のほうが、壁で失う分が多い」という向きだけを受け取っておくのが安全だと思います。

低く置くと、明るさは距離で決まります

このサイトでは、部屋の中に居場所をつくる方法として、天井の照明を使わずに低い光源を2〜3個置く、という話を何度か書いています。出どころはクリストファー・アレグザンダーの『パタン・ランゲージ』の Pools of Light (252) で、「Place the lights low, and apart, to form individual pools of light」— 光を低く、離して置き、椅子とテーブルを包む光だまりをつくる、という内容です (出典)。

同じパタンの問題提起は、均一な照明は空間の社会的な性格を壊し、人を囲われていない状態にする、というものでした。光だまりは、あいだの暗がりがなければ成立しないとも書いてあります。

では、低く置いた電球1個は、どのくらいの明るさをつくるのでしょうか。JLMAの別のガイドに、ちょうどよい数字がありました。電球形LEDランプの表示ガイドライン (ガイドB008) の解説に、白熱電球60Wの直下の光度は66カンデラで、1m下では66ルクス、2m下では16.5ルクスになると書いてあります (ガイドB008:2013 PDF)。距離が2倍になると明るさは4分の1になる、逆2乗の関係です。

同じガイドの付表1が、電球の明るさの対応表になっています。40形が485ルーメン、60形が810ルーメン、100形が1,520ルーメン。6畳用の3,200ルーメンは、60形の電球4個分 (3,240ルーメン) にあたります。

66カンデラの電球から、JISの各行の明るさが届く距離を逆算すると、こうなります。読書の500ルクスは36cm、団らんの200ルクスは57cm、天井1灯と同じ100ルクスは81cm、全般の50ルクスは115cm。電球1個でも、50cm以内に寄せれば団らんの明るさが出て、天井の1灯が机の上につくる100ルクスは、80cmの距離で追いつきます。

光だまりは、直径63cmです

距離だけでなく、机の上にできる明るい範囲の大きさも計算できます。電球を机の上40cmに置いたとき、真下から離れるほど照度は落ちていくので、200ルクス以上の範囲、50ルクス以上の範囲がそれぞれ円になります。

60形と100形の電球を机の上40cmに置いたときの光だまりの直径 (200lxと50lx) を示した断面図

60形 (66カンデラ) を40cm上に置くと、真下は412ルクス、団らんの200ルクスを超える円は直径63cm、全般の50ルクスを超える円は直径140cmになりました。100形なら真下774ルクスで読書の明るさに届き、200ルクスの円は直径97cm、50ルクスの円は直径183cmです。

わたしが計算していて気づいたのは、この183cmが、ラグの記事で引いたアレグザンダーのアルコーブ (179) の幅の上限、6フィート=182.88cmとほぼ同じだということでした。Pools of Light はアルコーブを仕上げるパタンとして書かれているので、100形の電球1個が40cmの高さから照らす範囲が、ちょうど居場所ひとつ分になっている、と読めます。偶然だと思いますが、目安として使うには悪くない一致です。

断っておくと、この直径は「どの向きにも66カンデラ」と理想化したシェードなしの電球の値です。実際の器具は、シェードの形で光を下に集めたり横に広げたりするので、円の大きさは変わります。それでも、60形1個で直径60cm強の団らん、100形1個で直径1m弱という目安があれば、ソファのどこにランプを置くかは決めやすくなります。

こうして数字にしてみると、「低く、離して置く」は感覚の話ではなくなります。天井の1灯は、部屋のどこも100ルクスにしますが、どこも100ルクスです。低い電球2〜3個は、置いた場所の周りだけを200〜400ルクスにして、あいだを50ルクス以下の暗がりのままにします。居場所とそれ以外の差を、光の量でつくるのがこの方法で、囲う家具の高さで書いた腰高の囲いと同じ役割を、光で果たしていることになります。

まとめ

照明の「〜6畳用」は、日本照明工業会ガイドA121の表に前提が書いてある数字でした。6畳は1畳=1.62㎡の広告の畳で数えた約10㎡のことで、標準3,200ルーメン、表示できる範囲は2,700〜3,699ルーメン。そしてその意味は、机の上を100ルクスにする光の量です。

100ルクスは、JISの居間の推奨照度のどの行にもありません。全般の50の2倍、団らんの200の半分。JISが「全般照明と局部照明の併用が望ましい」と書いているとおり、天井の1灯は全般の側で、行為の明るさは手元で足す前提になっています。しかも6畳では、光束の7割が机の上以外へ行きます。

低い光源は距離で明るさが決まります。60形の電球なら、57cmで団らん、36cmで読書の明るさ。机の上40cmに置けば、直径63cmの団らんの光だまりと、直径140cmの全般の明るさができます。「〜6畳用」の1灯を消して、60形を2〜3個、低く離して置く。それがこのサイトで書いてきた居場所のつくり方の、光の側の寸法です。

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