窓の前の家具の高さ — 腰窓の下端90cmは、ドアの高さから逆算されていました

「窓の前には低い家具を」の、低いとは何センチでしょうか

窓の前に家具を置くと暗くなるので、低いものを選ぶ。部屋づくりの記事でよく見る助言ですが、その「低い」が何センチなのかは、探してみると書き方がばらばらでした。

窓の下端は「80〜90cm」「高くても1m」、家具は「75cmなら干渉しない」「70cm以下なら」「腰高の収納家具を」。根拠として挙がるのはカーテンの丈だけで、なぜ窓の下端が90cmなのか、どこまで塞ぐと暗いのかを数字で書いたページは見つかりませんでした。

わたしは最初、腰窓の下端は法律で決まっているのだと思って条文を探しました。違いました。決めているのは業界の規格で、しかも窓ではなく、ドアの高さから逆算されています。いっぽう法律が決めているのは別の数字で、部屋に要る窓の「量」のほうでした。この2つを組み合わせると、窓の前に置ける家具の高さが出てきます。

腰窓の下端は、ドアの高さから逆算されています

住宅用サッシの寸法は、一般社団法人日本サッシ協会の「標準規格寸法」で全メーカー共通になっています。もとになったのは、平成10年に建設・通産両省 (当時) の指導のもとで出た答申です。

答申では「メーカー各社間でバラバラな寸法設定および呼称寸法表示を揃える」ことと、「高さをメートル法を基調とする寸法体系に改める」ことが求められました。導入は平成15〜16年です (日本サッシ協会「標準規格寸法」2021年4月改訂.pdf))。

この規格で、窓の高さは100mm刻みです。呼称は「幅3桁+高さ2桁」の5桁で、たとえば 16511 は幅1,650mm × 高さ1,100mm の窓を指します。そして掃出し窓の基本の高さは「高規格住宅基準 (室内ドア高さ 2000mm) 適応サイズである内法寸法 (h) 2000mm」と書かれていて、窓の上端をドアの上端に揃えるのが出発点になっています。

腰窓については、こうあります。

腰窓については 1100mm または 1300mm の内法基準寸法のサッシが用いられます。

上端が2,000で高さが1,100なら、下端は900。高さが1,300なら700です。文書の2階の例図もそのとおりで、「腰の高さを 900mm とした場合」に h1,100 の窓を組み合わせ、上端が2,000に揃っています。窓台の90cmは、ドアの高さ2mから窓の高さ1.1mを引いた残りでした。

ついでに安全の線も書かれています。「一般的には腰の高さが 900mm 以下の場合には窓手すりを付けるよう行政の指導があります」。2階の話ですが、90cmという数字が採光だけでなく転落の線でもあることがわかります。

同じ文書は、和室の2階で h900 のサッシを使うと「安全上問題はありませんが、暗いイメージとなります」とも書いていて、窓の高さを100mm変えると印象が変わることを規格の側が認めています。

部屋に要る窓の量は、法律が決めています

もう1つの数字は建築基準法にあります。28条1項の原文はこうです (e-Gov法令検索)。

住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(…)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、五分の一から十分の一までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上としなければならない。

住宅の割合は施行令19条3項の表で「七分の一」です (施行令19条・20条)。2023年4月からはただし書きが加わり、「床面において 50 ルックス以上の照度を確保することができる照明設備を設置する居室にあっては、1/10 以上で良い」ことになりました (国土交通省 技術的助言 令和5年3月24日)。

50ルクスの根拠は JIS Z 9110 で、「居室の床面全てにおいて」確保する必要があると国交省が答えています (パブリックコメント結果)。

面積の数え方は施行令20条にあり、窓の面積に「採光補正係数」を掛けます。隣地との距離と軒の高さの比から出す数で、上限は3.0、道に面した窓は1.0を下回っても1.0とみなすと決まっています。ここでは、いちばん厳しい側の1.0で計算します。

江戸間の6畳 (内法261×352cm) は9.19㎡なので、1/7は1.31㎡、1/10は0.92㎡です。腰窓16511の内法は1.815㎡ですから床の1/5にあたり、係数1.0でも基準を満たします。言い換えると、幅1,650の窓で1.31㎡を作るには、高さ79.5cm分のガラスがあれば足ります。

6畳の床の1/7 (1.31㎡) は幅165cmの腰窓で高さ79.5cm分。家具は120.5cmまで

断っておくと、この法律が掛かるのは建物のほうで、家具の置き方は住む人の自由です。窓が規格どおりに付いていれば、前に何を置くかは法律の外の話になります。

ただ「国が住宅の居室に最低限と決めた光の量」は、物差しとしては使えます。家具で窓を塞いだとき、残った窓がその最低限を上回っているかどうかは計算できるからです。

家具の上に残る窓は、家具の高さだけで決まります

窓の上端が2,000に揃っているので、窓台が90でも70でも、家具の上に残る窓は同じ式になります。残る窓 = (200 − 家具の高さ) × 窓の幅。幅1,650の腰窓の前に、同じ幅の家具を置いたときの結果が下の表です。

家具の高さ塞ぐガラス残る窓床の何分の11/7 の線
90cm (窓台)01.82㎡1/5.1○
100cm窓の9%1.65㎡1/5.6○
120cm27%1.32㎡1/7.0○ (余裕75cm²)
130cm36%1.16㎡1/8.0×
150cm55%0.83㎡1/11× (1/10 も ×)
180cm82%0.33㎡1/28×

腰高100cmの家具が塞ぐのは、窓の9%です。120cmでちょうど1/7に届き、余裕は75cm²で、はがき半分ほどです。130cmで切り、145cmで照明つきの1/10も切ります。180cmの本棚を窓の前に置くと、窓の82%が消えて、残りは床の1/28です。

家具の高さ別に、腰窓の前に残る窓の面積。腰高100cmで窓の9%、120cmで床の1/7の線、180cmで82%が消える

計算の前提を2つ書いておきます。窓の面積はサッシの内法基準寸法をそのまま使っていて、実際のガラスは框のぶん少し小さくなります。係数は1.0で、隣地まで距離がある部屋なら係数が上がり、上限の3.0なら残す窓は1/3で済むので、家具は173.5cmまで置けることになります。どちらに転んでも、答えは「窓台より上に出た高さ」で決まるところは変わりません。

120cmは、座った目線の高さでもあります

図を描いてみて気づいたことがあります。1/7の線が120.5cmに来るのですが、前回の記事で使った産総研の人体寸法データベース (1991-92) の値で、椅子に座った青年女性の目の高さは116.9cm (座面42cm) でした。

法律の最低限の線と、座った目線の線が、ほぼ同じ高さに来ています。偶然ですが、実用上は都合のいい偶然です。

つまり腰高100cmの家具なら、座った目は家具の上端より17cm上にあって、家具越しに窓が見えます。窓台の90cmは座った目より27cm下です。家具が120cmになると、座った目より3cm上に出て、座っている間は窓が家具の裏側に隠れます。立てば目は148cmですから見えますが、部屋の中で長い時間を過ごすのは座っている姿勢のほうです。

窓台90cmと座った目117cm・立った目148cmの断面図。家具100cmなら座ったまま窓が見え、120cmで目線をまたぐ

「囲う家具の高さ」で書いた「腰高で囲う」は、座ると囲われ、立つと抜ける高さの話でした。窓の前に限っては、それに理由がもう1つ加わります。腰高なら、窓の量も座った目線も、どちらも守れる。窓台と同じ90cm前後の家具を窓の下に置けば、ガラスは1cmも減らずに済みます。

家具の色は、残った窓の効きを変えます

窓の下の家具は、部屋のなかでいちばん光を受ける面です。反射率の話は「白い家具の反射率」に書きましたが、白いペイントは光の70〜85%を返し、濃い色のペイントが返すのは15〜40%です。

窓台の下に濃い色の家具を置くと、いちばん明るい場所に吸収面を作ることになります。原則3の「目立たせたくない家具は白かシルバー」は、窓の前ではとくに効きます。

なお、照明で1/10に緩和できる件は、家具の話にも使えます。床面で50ルクスは、「明るさの基準面」で書いた机の上の基準よりずっと暗い値です。低い光源を2〜3個置く部屋なら、床面50ルクスは難なく超えます。

窓を少し塞いでも、光の量は照明で足せる。法律が2023年にそう認めたのは、部屋づくりの側にとっては追い風です。

まとめ

腰窓の下端が90cmなのは、日本サッシ協会の規格が窓の上端を室内ドアと同じ2,000mmに揃え、腰窓の高さを1,100mmにしているからです。法律で決まっているのはそこではなく、住宅の居室に要る窓の量で、床面積の1/7以上 (50ルクス以上の照明があれば1/10) でした。

窓の上端が揃っているので、家具の上に残る窓は「200 − 家具の高さ」だけで決まります。6畳に幅1,650の腰窓なら、家具は120cmまでが1/7の線で、腰高100cmが塞ぐのは窓の9%です。そして120cmは、座った目線とほぼ同じ高さでした。

窓の前に置ける家具は、120cmまで。100cmなら窓はほぼ無傷で、座ったまま外が見えます。「低い家具を」の低いとは、窓台の90cmに10cm足したあたりのことだと、わたしは受け取っています。

※この記事にはアフィリエイト広告が含まれます。

コメントする