白い家具の反射率 — 部屋が小さいほど、家具の色が明るさを決めます

「白は明るい」の、明るいは何のことでしょうか

このサイトの3原則の3つめは「目立たせたくない家具はシルバーか白」です。理由は器を消して中身に色を持たせるためなのですが、白い家具にはもうひとつ、よく言われる効き目があります。部屋が明るくなる、というものです。

「白い家具 明るくなる」で検索すると、上位は家具の通販とインテリアの記事で埋まっていました。どのページにも「白は光の反射率が高いので明るく広く見える」と書いてあります。ただ、その反射率が何パーセントなのかを書いたページは、1件もありませんでした。

わたしは最初、数字そのものが世の中にないのだと思いました。ところが検索語を「壁 天井 反射率」に変えたとたん、照明メーカーの技術資料が並びました。数字はずっと前から公開されていて、部屋づくりの側がそれを引いていないだけでした。この記事は、その数字を家具に当てはめたものです。

反射率の表は、1957年から変わっていません

パナソニックと岩崎電気は、それぞれの照明設計資料に「材料の反射率」の表を公開しています(パナソニック・岩崎電気)。出典はどちらも同じで、『建築学大系22 室内環境計画』という1957年の本です。70年近く前の表が、いまも現役で使われています。

家具に関係しそうな行を抜き出すと、こうなります。

材料反射率 (%)
白色ペイント、エナメル、琺瑯70〜85
つや消しアルミ60〜80
クローム、ニッケル (鏡面)60〜70
白壁一般55〜75
淡色ペイント一般30〜70
色付ラッカー、ニス20〜40
濃色ペイント一般15〜40

2社を並べて読んでいて、ひとつ気づいたことがあります。同じ本を引いているのに、白色ペイントの値だけが違うのです。パナソニックは70〜85、岩崎電気は80〜85。ほかの行はすべて一致していました。転記の経緯までは分からないので、この記事では幅の広いほうの70〜85を使います。

家具メーカーは塗装面の反射率を公表していません。無印良品もニトリもIKEAも、商品ページにその数字はありませんでした。

なので木製家具の塗装面は「色付ラッカー、ニス」の20〜40、白い家具は「白色ペイント」の70〜85で読みます。中央値どうしで比べると、白い器は木の器の2.6倍の光を返すことになります。

そして表を見て分かったのが、シルバーの位置でした。つや消しアルミは60〜80、鏡面のクロームは60〜70。白とシルバーは、光を返す量では同じ帯に入っています。「シルバーか白」という言い方は感覚で決めたものだと思っていたのですが、反射率の表では最初からひとつのグループでした。

明るく見えるのは、照度ではなく輝度です

ここで言葉をひとつ分けておきます。照明の世界では、面に届く光の量を「照度」(ルクス)、面から返ってくる明るさを「輝度」(cd/㎡)と呼びます。岩崎電気の用語集は、輝度を「発光(反射、透過)面の明るさの程度」と定義しています(岩崎電気)。目が「明るい」と感じているのは、こちらのほうです。

反射率の定義(反射した光束÷入射した光束)と、均等拡散面の関係式(光束発散度=π×輝度)を組み合わせると、輝度=反射率×照度÷πになります。同じ300ルクスの光を受けたとき、白色ペイント(中央値77.5%)の面は74.0 cd/㎡、濃色ペイント(27.5%)の面は26.3 cd/㎡。2.8倍の差です。

つまり、照明を変えなくても、面の色を変えれば目に入る明るさは変わります。照明の記事では「何ルクスあれば十分か」がよく話題になりますが(明るさの基準面の記事でも書きました)、その光を受け止める面のほうが2.8倍動くというのは、照明器具の側だけを見ていると気づきにくいことでした。

同じ300ルクスを受けたときの輝度の差と、マンセル明度と反射率の対応を示した図

色の明るさには、マンセル明度という尺度があります。0(黒)から10(白)までを等間隔に分けたものですが、パナソニックが載せているJIS Z 8721の対応表を見ると、反射率のほうは等間隔になっていません。

明度9が77%、明度8が58%で、上のほうで1段下げると19ポイント落ちます。いっぽう明度4は12%、明度3は6%で、下のほうでは6ポイントしか動きません。同じ「1段」でも、白のそばと黒のそばでは意味が3倍違います。

これは、目が明るさを対数のように感じている、ということです。白に近い色は、ほんの少し落とすだけで返す光が大きく減ります。逆に、暗い色どうしの違いは反射率にはほとんど出ません。白い家具を「アイボリー」にするのと、こげ茶を「黒」にするのでは、失う光の量がまったく違うわけです。

腰高で囲うと、壁の4割が家具になります

ここからが、このサイトの話になります。3原則の2つめは「高すぎず低すぎない家具で囲む」で、囲う家具の高さの記事では腰高、およそ1mを目安にしました。その家具が、壁のどれだけを覆うかを数えてみます。

江戸間6畳(2.61×3.52m)で天井が2.4mなら、4面の壁の面積は2×(2.61+3.52)×2.4=29.42㎡です。ここに高さ1.0mの家具を全周に回すと、家具の面は2×(2.61+3.52)×1.0=12.26㎡。壁の41.7%が、家具の色に置き換わります(開口部は無視しています)。

パナソニックの照明率の解説には、作業面を明るくするのに役立たない光として「天井、壁、床、家具などで吸収される光」が挙げられています(パナソニック)。家具は、照明計算のなかでは壁と同じ「光を吸う面」として扱われています。

そこで壁全体の反射率を、白壁一般の中央値65%と家具の面との面積按分で出してみました。家具が濃色ペイント(27.5%)なら49.4%、色付ラッカー(30%)なら50.4%。白色ペイント(77.5%)なら70.2%で、家具のない壁(65%)より高くなります。

江戸間6畳の壁を展開し、腰高1mの家具が壁の41.7%を占めることを示した図

図を描いていて、わたしはひとつ言い方を直しました。最初は「白にすれば壁の反射率が元に戻る」と書いていたのですが、白い器は壁より明るいので、戻るのではなく超えます。腰高で囲うというのは、壁の4割を家具の色に塗り替える行為でした。だから、器の色を決めずに囲うことはできません。

部屋が小さいほど、壁の色が効きます

壁の反射率が下がると、部屋はどれだけ暗くなるのでしょうか。照明設計では、光源から出た光のうち作業面に届く割合を「照明率」と呼び、器具ごとの表から読みます。表の入口になるのが「室指数」で、間口×奥行÷((間口+奥行)×光源の高さ)で計算します。

江戸間6畳・天井2.4mなら、室指数は机上0.8mで0.94、座業面0.4mで0.75です。岩崎電気が公開している照明率表の例(岩崎電気・器具SAW416)で、天井70%・床10%のときの壁70%と壁30%を比べると、こうなりました。

室指数壁70%壁30%差
0.80(6畳の座業面に近い)6352−17.5%
1.006859−13.2%
10.00(大きな部屋)8583−2.4%

6畳では、壁の反射率が70から30に落ちると、届く光が17.5%減ります。大きな部屋では2.4%です。壁が近い部屋ほど、光は壁に何度も当たってから目に届くので、壁の色がそのまま明るさに直結します。

さきほどの面積按分をこの表に当てると、家具を濃色から白に替えたときの照明率は56.8から63.0で、およそ11%の差でした。照明器具を替えずに、器の色だけで1割動きます。

室指数と照明率の関係を壁の反射率70・50・30で比べた図

ひとつ断っておくと、この表は工場用の高天井器具のものです。住宅のシーリングライトの表は一般公開されているものが見つからなかったので、傾向を見るための実例として使っています。数字そのものより、部屋が小さいほど壁の色が効く、という向きを読んでください。

白とシルバーは、返し方が違います

反射率の帯は同じでも、白とシルバーには違いがひとつあります。岩崎電気の表は、材料を「拡散性」と「正反射性」に分けています。白色ペイントやつや消しアルミは拡散性で、受けた光を四方に散らします。鏡面のクロームは正反射性で、光をそのまま跳ね返します。

跳ね返すというのは、周りを映すということです。鏡面のシルバーの器は、隣に置いた赤い本があれば赤を、青い箱があれば青を映します。器そのものは色を持たず、中身の色を借りて見える。これが、シルバーが白と同じ「消える器」でいられる理由だと、わたしは思っています。つや消しのシルバーなら、拡散性なので白とほぼ同じ働きです。

どちらを選ぶかは、返し方の好みで決めてよいと思います。反射率で見るかぎり、白かシルバーかの差より、白かこげ茶かの差のほうがずっと大きいからです。

数字を自分の部屋で確かめたい方は、照度計が数千円で買えます。同じ照明の下で、白い棚の前と木の棚の前で照度を測ると、跳ね返りのぶんだけ値が変わります。わたしはこの記事を書くまで、照度計は照明を選ぶための道具だと思っていました。家具の色を選ぶ道具でもあります。

まとめ

「白い家具は部屋を明るくする」には、数字がありました。白色ペイントの反射率は70〜85%、木製家具の塗装面は20〜40%。同じ300ルクスを受けても、面が返す明るさは2.8倍違います。そしてシルバーは、つや消しでも鏡面でも、白と同じ60〜85の帯に入っていました。

腰高の家具で囲うと、6畳では壁の41.7%が家具の色になります。壁全体の反射率は、濃色の家具で49%、白い家具で70%。6畳の室指数では、壁の反射率が70から30に落ちると届く光が17.5%減り、大きな部屋なら2.4%です。部屋が小さいほど、家具の色が明るさを決めます。

このサイトでは「物を減らさずに広く見せる」と書いてきました。器を白かシルバーにするのは、中身に色を譲るためでした。でもそれは同時に、壁の4割を明るい面に置き換えて、部屋が受け取る光を増やすことでもあります。ひとつの選択で、2つ解決しています。

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